「顧客第一」
これは、どの企業でも掲げられている理念のひとつでしょう。

しかし実際の現場を見てみると、その“顧客第一”を支えるはずのスタッフが、最もないがしろにされているケースが少なくありません。

  • 長時間労働

  • 評価されない努力

  • 一方的な指示命令

  • 心をすり減らす理不尽な対応

これでは、いくら理念を唱えても、現場のスタッフの心は離れ、顧客満足も継続しません。

今回は、企業の真の価値を決める
“スタッフ=PC(Production Capability=成果を生む資本)”という視点から、本当の意味での「顧客第一」について考えていきます。

第1章 「顧客第一」が現場で空虚になる瞬間

ある企業では、「お客様に笑顔を」と毎朝唱和している一方で、その“笑顔”を生み出すスタッフたちは、上司の顔色をうかがいながら働いていました。

  • 無理なシフト

  • クレーム対応の丸投げ

  • 売上ノルマのプレッシャー

「顧客第一」を掲げているつもりでも、“人”を道具のように扱っていては、現場のエネルギーは枯れていくのです。

顧客の前で笑顔をつくりながら、心では「どうせ会社は自分を大事にしていない」と思っている。
この状態が続けば、その場しのぎの接客しか生まれません。


第2章 スタッフは「資本」であり、接客そのものを担う存在

企業が持つ“成果を生み出す資本(PC)”には、機械や設備もありますが、最も重要なのは“人”=スタッフです。

つまり、スタッフとは単なる労働力ではなく、顧客との接点を生み出し、信頼や満足を育む“最前線の資産”なのです。

  • その人の表情

  • その人のひとこと

  • その人の対応の温度

これらが、顧客の印象を決定づけます。
だからこそ、顧客に接するように、スタッフにも接するべきなのです。


第3章 “外向けの態度”を“内向き”にも適用できているか?

「お客様には丁寧に、笑顔で接してください」
これをスタッフに求めるのは当然かもしれません。

では、その姿勢をスタッフ自身にも向けているでしょうか?

  • 小さな成功を認めているか

  • 話を聴いてもらえているか

  • 一人の人間として尊重されているか

スタッフに対して、
「接客と同じように接する」姿勢があるかどうかが、その企業の真の“誠実さ”を映し出します。


第4章 “内側に温かい会社”は、自然と外側にも伝わる

スタッフが安心して働ける職場は、自然と顧客にも温かさが伝わるものです。

たとえば、あるカフェチェーンでは、店長がスタッフの「ありがとうカード」を毎日1枚ずつ書き続けたそうです。
その習慣が、スタッフ同士の思いやりを育て、結果として店舗の満足度が全国1位になりました。

スタッフを尊重する文化が、そのまま顧客満足に跳ね返る。

これは一つの例にすぎませんが、“内側での信頼”が、“外側での信頼”を生むという構造を示しています。


第5章 会社がスタッフにできる“接客”とは何か?

では、会社はスタッフに対して、どのような接し方をすべきなのでしょうか?

以下に、いくつかの基本姿勢を挙げてみます。

① 話をよく聴く(傾聴)

スタッフの声を軽んじない。
不満ではなく“改善のヒント”として受け取る姿勢が大切。

② 小さな貢献を認める(承認)

「ありがとう」「助かったよ」など、日々の感謝の言葉を惜しまない。

③ 無理をさせない(持続性の配慮)

成果ばかりを求めず、人としての健全性を守る配慮を忘れない。

④ 共に考える(共創)

指示命令だけでなく、スタッフを“一緒に考える仲間”として見る。
問題が起きたときこそ、姿勢が試されます。


おわりに

「顧客第一」という理念は、正しい。
しかし、それを実現できるかどうかは、“スタッフをどれだけ大切にできているか”にかかっているのです。

顧客に笑顔を届けるのはスタッフであり、そのスタッフに笑顔を届けるのは、企業自身です。

もし、現場の疲弊や離職が続いているなら、一度問い直してみてください。

「私たちは、本当に“最も大切な資本”を大切にできているだろうか?」

内側に誠実な会社だけが、外側にも信頼を届けることができるのです。