「この人はこういう人だ」
「いつも同じ失敗を繰り返す人だ」
「期待してもムダだ」

私たちは、他者に対して“過去”に基づいたラベルやレッテルを貼りがちです。
しかし、その見方が、知らず知らずのうちに相手の成長を妨げ、可能性の芽を摘んでいるかもしれません。

逆に言えば、相手の中にある“まだ見ぬ可能性”に光を当てるまなざしがあれば、その人の人生を大きく動かす「預け入れ」ができるのです。

第1章 「他者に映す鏡」は、相手の人生に影響する

あなたが子どもに「できる子だね」と言い続ければ、子どもはそれに応えるようになります。

部下に「いつも助かっているよ」と声をかければ、彼はその信頼に応えようと行動します。

逆に、
「どうせ無理だろう」
「またか…」
そんな言葉や態度が、相手のやる気を奪い、その人自身が自分の可能性を信じられなくなってしまう。

他者に映す“見方”は、相手のアイデンティティ形成に大きく影響するのです。


第2章 信頼口座とは何か?──人間関係を支える“預け入れ”

信頼口座とは、人間関係の中に築かれていく“信頼の貯金”のようなものです。

  • 約束を守る

  • 話をよく聴く

  • 小さな成長を認める

  • 過去の失敗を責めない

こうした日々の積み重ねが、信頼口座に“預け入れ”をもたらし、関係の安定と発展に大きな影響を与えます。

「見方を変える」という行為もまた、預け入れの一つです。

その人の内側にある「まだ出会っていない可能性」を信じて見ること。
それだけで、相手は変わり始めるのです。


第3章 記憶ではなく、想像力で相手を見る

私たちは往々にして、他人を見るときに“記憶”を使います。

  • あのとき、あんな態度だった

  • 以前、こんな失敗をしていた

  • 何度言っても直らない

過去の経験が、目の前のその人の姿を歪めてしまうのです。

しかし、本当に大切なのは、“想像力”を使うこと。

  • この人は、どんな可能性を秘めているだろう?

  • 今日この瞬間、新しい一歩を踏み出すかもしれない

  • もしかしたら、過去とは違う意志を持っているかもしれない

そんなふうに、毎回“新しいまなざし”で相手を見ることができたなら、関係性も、相手自身の在り方も、少しずつ変わっていくのです。


第4章 「レッテル」を貼らずに見るための3つの習慣

① 会話の冒頭を“ゼロベース”にする

先入観を捨てて、「今日はどんな話をしてくれるだろう?」という姿勢で聴く。
いつもと同じように見えても、“今日のその人”は違う可能性がある。

② 過去の失敗ではなく、“小さな前進”に注目する

「またミスした」ではなく、
「前より早く報告できた」など、変化の兆しに焦点を当てる。

③ “こうあってほしい姿”を信じて、言葉にする

「あなたなら、きっとできる」
「私は、あなたの成長を見ている」
そうした“信じているというメッセージ”が、相手の行動を変える土壌になる。


第5章 “まなざし”が相手の未来を変える

あなたの見方が変わったとき、相手の中に眠っていた可能性が、少しずつ目を覚ましていきます。

  • 配偶者に対して、「いつも通り」ではなく「今日のあなた」を見る

  • 子どもに対して、「苦手な子」ではなく「成長する子」と見る

  • 部下に対して、「期待外れ」ではなく「期待している人」として接する

このように、まなざしの変化が相手に与える影響は計り知れません。

そして何より、あなた自身の心も、驚くほど穏やかで前向きになっていくのです。


おわりに

人は、誰かのまなざしによって変わる生き物です。
だからこそ、私たちが「どう見るか」は、相手の人生の“脚本”にさえ影響を及ぼします。

過去ではなく、可能性を
記憶ではなく、想像力を
評価ではなく、信頼を

こうしたまなざしを持てたとき、あなたの周囲にある人間関係は、きっと温かく育っていくはずです。

そして、それが自分自身の信頼口座への最大の“預け入れ”にもなるのです。