シナジーによる新しい選択を探るとき、創造的な活動のほとんどは予測のつかない出来事がつきものである。
先が見えず、当たるか外れるかもわからず、試行錯誤が当たり前になる。
この不確実な状況において、安定を外に求める人は不安に飲まれ、挑戦を続けることができない。
だが、自分の内に明確な価値観や原則を持つ人は、曖昧さにも意味を見出し、創造のプロセスを“生きがい”として楽しむことができる。
本記事では、そうした人の「心の使い方」と「不安との向き合い方」について、具体例を交えて解説していく。
第1章 なぜ創造には不安がつきまとうのか?
あるベンチャー経営者から、こんな相談を受けたことがある。
「新しい事業を立ち上げてはみたものの、正直、不安しかないんです。成功する保証もないし、誰も正解を教えてくれない…」
これはごく自然な感情だ。
創造とは、これまでにないことに挑戦する行為であり、地図のない旅に等しい。
そのため、「これで合っているのか?」という不安はつきものであり、逆に言えば、それがなければ創造とは呼べないとも言える。
ただし、その不安をどう扱うかで、その後の人生は大きく変わる。
不安を「避けるべきもの」と捉える人は、行動が止まり、挑戦も小さくなる。
逆に、不安を「付き合っていく対象」として捉える人は、大きな可能性を切り開いていく。
第2章 曖昧さに耐えるための「内なる安定軸」
では、不安に飲まれないためにはどうすればよいか?
その鍵は「外」にあるのではなく、「内」にある。
つまり、自分の価値観や原則という“安定軸”を持つことである。
過去にコンサルティングしたクライアントで、出版業界からIT業界へ転職し、自分の専門性が通用しないことに焦りを感じていた方がいた。
彼は「自分の強みが何も活かせない」と悩み、自信を失いかけていた。
しかし、自己理解と対話を重ねる中で、彼は「自分は“伝える”ということに使命感を持っている」という原点に立ち返った。
そこから、“伝える”ことを軸に、社内向けマニュアルの作成やプレゼン資料の改善に取り組み始め、次第に周囲からの信頼を回復していった。
「自分は何を大切にしているのか」
この問いに答えられる人は、結果が見えないときでも、前に進み続けられる。
第3章 確実性を手放した人が手にするもの
創造に必要なのは、「予測できる未来」ではなく、「信じられる行動」だ。
にもかかわらず、枠組みや計画、他人の評価ばかりに依存してしまう人は、行動を起こせなくなる。
以前、研修で出会った中堅マネージャーが印象的だった。
彼は「業務改善アイデアを出しても、上層部に通らなかったら時間のムダになる」と発言していた。
しかし、私はこう問い返した。
「通るかどうかがすべてなら、あなたの創造性は“承認”に支配されてしまいます。それでも“やる価値がある”と思える何かはありませんか?」
この問いをきっかけに、彼はまず「小さな提案」を現場レベルで試し始めた。
それが結果につながり、半年後には正式に改善プロジェクトのリーダーに任命された。
「正解があるかどうか」で動くのではなく、「やる意義があるかどうか」で動く人が、最終的に信頼と成果を両立していく。
第4章 不安が“遊び”に変わる瞬間
曖昧な状態や、先が読めないプロセスの中にも「楽しさ」を見出せる人がいる。
彼らは、不確実性を“遊び”と捉えられる。
そのために必要なのは、「成果」に過剰に縛られないこと。
たとえ失敗しても、自分が大切にしている価値観に照らして「納得」できていれば、それは前進だと捉えられる。
たとえば、ある女性起業家は、商品が全く売れなかった経験を持っている。
しかし、「自分が届けたかった想いがある」と言い切れた彼女は、商品設計を見直し、ターゲットを再設定し、やがて人気講師として活躍するまでになった。
創造の本質は、「うまくいくか」ではなく、「どう在るか」にある。
その視点を持つことで、失敗すら学びに変わり、不安すら人生の一部として受け入れられる。
第5章 まとめ:自分の軸を持てば、不安は怖くない
創造的な人生を歩むには、「こうすれば正解」という保証を手放す勇気が必要だ。
そして、外の世界の安定ではなく、自分の内にある“軸”に信頼を寄せることだ。
価値観が明確であれば、たとえ道に迷っても、自分で進む方向を決められる。
それが、自分で自分を導くということだ。
曖昧さに耐えられる人こそ、真の意味での創造者である。
そして、その人だけが「不確実性の中にある希望」を見つけることができる。
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