「家さえ持てば」「時間さえあれば」──そうつぶやくたびに、私たちは無意識に“環境任せ”のレールに乗っている。
部下を持つリーダーも、子育てに追われる親も、「手に入れば変われる」と外側ばかり眺めているかぎり、内側のアクセルには触れられない。
読者相談でもっとも多いのは、「努力しているのに報われない」という悩みだが、その土台には必ずと言っていいほどHave思考が潜んでいる。
Have思考が連れてくる停滞
所有を起点に物事を考えると、現状を打開する鍵は常に“自分の外”へ逃げる。
「もっと理解ある上司」「もっと協力的な家族」など、望みは尽きないが、同時に無力感も深まる。
私は企業研修で延べ5,000人を指導してきたが、目の前の条件を嘆く人ほど、変化スピードが遅い。
逆に資源不足でも成果を出す人は、「今ここで自分にできる最良は何か」を探す Be思考 を徹底している。
Be思考を選び取る
Be思考とは、「私はどう“ある”か」を主語に行動を決める姿勢だ。
忍耐が要る場面なら「私は忍耐強くある」、知識が足りないなら「私は学び続ける人である」と宣言する。
ポイントは 感情より価値観を優先する こと。
怒りや不安が湧いても、「私は誠実である」という軸で応答すれば、周囲の反応も変わり始める。
こうした小さな“あり方”の選択が、やがて大きな習慣となる。
誰かの行動や環境を変えようとするより、自分の在り方を整える方が、よほど早く、深く、持続可能な変化をもたらすのだ。
実績例:プロジェクト再生の舞台裏
製造業の新規ライン立ち上げで納期遅延が常態化していた現場を支援した際、チームは「余裕のある予算さえあれば」と環境を嘆いていた。
私はリーダー陣に「私たちはどうあるか」を自問してもらい、毎朝10分の“Be宣言ミーティング”を導入。
「私は問題を放置しない」「私は隣部署と協力的である」と言葉にしてからタスクに入る。
三か月後、遅延は半減し、社員満足度が15ポイント上昇した。
外部要因は変わらなくても、自分の在り方を選んだ瞬間に成果は動いた 典型例である。
今日からできる三つのリフレーミング
1.言い換えメモ
「○○さえあれば」を見つけたら、「私は○○である」に書き換える。
紙に残すことで思考の癖が可視化される。
2.24 時間ルール
批判や不平が浮かんだら、その場で行動せず翌日まで保留し、「自分にできる一手」を探す。
感情に主導権を渡さない訓練になる。
3.週次レビュー
Be宣言が実践できた場面を三つ書き出す。
成功体験を蓄積すると、自己イメージが更新され、行動が加速する。
このような思考の切り替えは、ビジネスの現場だけでなく、家庭や人間関係にも効果を発揮する。
「夫さえもっと理解してくれたら」から、「私は相手の話を丁寧に聴く人である」への転換は、対話の質を劇的に変える第一歩になる。
悩みとの接続:時間も環境も変えられない人へ
「育児と介護で自分の時間ゼロ」という相談者も、まず睡眠前の5分だけをBe時間にあてた。
「私は学び続ける人」を掲げ、英単語を一日一語メモ。
半年で180語。短いが“自分で選んだ積み上げ”は、自己効力感を押し上げ、ついにはフリーランス翻訳の副業まで実現した。
行動量より、“誰として行動するか”が未来を決める。
まとめ──レンズを掛け替える勇気
深く正直に「今日の私は過去の選択の結果だ」と認められなければ、「明日は別の道を選ぶ」とは言えない。
関心の輪(have)に留まれば、景色は変わらない。
影響の輪(be)に踏み出したとき、初めて視界が広がる。
レンズを掛け替えるのは一瞬、そこからの景色は一生。
あなたは、今日どちらの輪にフォーカスするだろうか。
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