どんなに優れた仕組みを整えても、チームがうまく機能しないことがあります。
「タスクは管理されているのに、結果が出ない」
「みんな動いているのに、なぜか前に進まない」

そんな状態に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
それは、効率的なマネジメントが行われている一方で、“効果的なリーダーシップ”が欠けている可能性があります。

ある人は、この状態をこう表現しました。
「沈みゆくタイタニック号の甲板で、椅子をきちんと並べているようなもの。」
つまり、どんなに秩序立っていても、進む方向を間違えれば意味がないのです。

この記事では、「なぜ効率だけでは成果が出ないのか」、そして「真に効果的なリーダーシップとは何か」を掘り下げていきます。


第1章 効率の罠——「正しく進んでいる気がする」安心感

近年、働き方改革やDX推進によって、多くの職場で効率化が進みました。
タスク管理ツール、会議の削減、チャット文化。
一見すると、すべてがスマートに動いています。

しかし、私たちは時に「効率的に動くこと」自体を目的にしてしまいます。
本来は目的を達成するための手段であるはずが、“効率化”がゴールにすり替わってしまうのです。

たとえば、チームが方向を見失っているのに、スケジュールだけが完璧に整っている。
これが「タイタニック号の椅子を並べる」状態です。
沈みかけている船でいくら秩序を保っても、行き先が間違っていれば無意味です。


第2章 マネジメントとリーダーシップの違いを理解する

マネジメントとリーダーシップは似ているようで、本質が違います。

  • マネジメントは「正しく物事を行うこと」

  • リーダーシップは「正しいことを行うこと」

どれほど効率的にタスクを進めても、チームが向かうべき方向を見誤れば、努力は空回りします。
逆に、方向が明確であれば、多少の非効率さがあっても成果につながります。

私自身、かつては管理ばかりに意識が向いていました。
進捗表を整え、報告を求め、スケジュールを守らせる。
しかし、メンバーの顔から活気が消えていったのです。

「なぜやるのか」が見えていない状態での効率化は、人の心を消耗させるだけだと痛感しました。


第3章 リーダーが示すべき“正しい方向”とは

効果的なリーダーシップの本質は、方向性の提示です。
「何を目指すのか」「なぜそれをやるのか」を明確に示すこと。
そのうえで、メンバーが自分の意志で動ける環境を整えることです。

リーダーは先頭を走るのではなく、チームが迷わないように“地図”を描く存在です。

私がかつて関わったチームでは、ある時期、数値目標ばかり追い続けていました。
ところがある日、一人のメンバーが言いました。
「私たちは、誰のためにこの数字を追っているんですか?」

その言葉でハッとしました。
目的を見失ったまま、椅子を並べていたのは自分だったのです。
そこから「数字の裏にある意義」を話すようになり、チームは再び動き出しました。


第4章 リーダーが持つべき視点——“効果性”を優先する

効率よりも大切なのは「効果性」です。
つまり、「やるべきことを正しい方向に行っているか」。

ここで大切なのは、リーダー自身が“原則”を基準に判断しているかどうかです。
その原則とは、「誠実」「信頼」「尊重」「貢献」といった普遍的な価値観。

短期的な成果を追うだけでは、チームの信頼は積み上がりません。
原則に基づいた行動は、一見遠回りに見えても、長期的には組織を強くします。

リーダーが正しい方向を示すとは、単に「目標を設定する」ことではなく、
「価値あるゴールを示す」こと。
そこに人は自然とついていくのだと思います。


第5章 今日からできるリーダーシップの3つの実践

では、リーダーとして今すぐできることは何か。
私が意識している3つの実践を紹介します。

① チーム全員と“目的”を再確認する

「何のためにこの仕事をしているのか」を定期的に話す。
全員の視点がそろうと、自然に協力が生まれます。

② 判断の軸を“原則”に置く

短期の数字よりも、誠実さ・信頼・長期的貢献を優先する。
それが結果的に最も大きな成果を生みます。

③ 効率より“効果”を問い続ける

「今やっていることは、本当に目的に近づいているか?」
この問いをチームの共通言語にしてみてください。


まとめ 方向が定まれば、スピードは自然に上がる

効率的なマネジメントは、組織に秩序をもたらします。
しかし、それだけでは船は前に進みません。

リーダーがすべきことは、正しい方向を示し、チームを信じて進ませること。
方向が定まれば、スピードは自然に上がります。

沈みゆく船で椅子を並べるのではなく、航路を修正する勇気を持ってください。
その一歩が、あなたのチームを“成果の海”へ導く最初の舵になると思います。