自分と考え方の違う人にイラッとしたことはありませんか?

「あの人は空気が読めない」「なんでそんな言い方をするの?」──そんな場面に出くわすたびに、職場での人間関係のストレスを痛感している人は少なくありません。

しかし、もしその“違い”が、実は組織にとって大きな財産だとしたらどうでしょうか?

私はこれまで、生産性向上を考え、実践するチームを数多く見てきました。
その中で見えてきたのは、「違い」を活かす力を持つ人こそ、どんな環境でも成果を出し続けているという事実です。

本記事では、シナジー(相乗効果)を生むために欠かせない「違いを活かす力」について、3つの観点から深掘りしていきます。

第1章:そもそも「違い」がなぜ衝突を生むのか

職場で起きる衝突の多くは、性格や価値観、仕事の進め方の“違い”が原因です。
ある人にとっては「丁寧にやる」が正義でも、別の人にとっては「スピードが最優先」かもしれません。

違いは、放置すれば不信感につながります。
しかし、それを「正すべきもの」と見るか「活かすべきもの」と見るかで、関係性も成果も大きく変わってきます。

違いを否定し合うチームは、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものです。


第2章:シナジーを生む人は、相手の“見え方”を知っている

違いを活かす第一歩は、相手の視点を理解すること。
自分の考え方が“正解”だと思っているうちは、対話はかみ合いません。

過去にある中小企業では、新任マネージャーがベテラン社員との価値観の違いに悩んでいました。
新しい提案をすると、「そんなやり方は聞いたことがない」と跳ね返されてしまう。

そこで行ったのは、互いの強み・弱み・価値観を“見える化”するワークショップ。
結果、マネージャーは「この人は新しいことを否定しているのではなく、過去の失敗を繰り返したくないだけだった」と気づきました。

これをきっかけに、2人は“予防線を張る役割”と“突破力で進める役割”として連携できるようになり、プロジェクトは半年で大きな成果を上げるようになったのです。


第3章:「自分を知る」ことが、他人との協働を加速させる

違いを活かすためには、自分の立ち位置や強み・弱みを把握することが不可欠です。
なぜなら、自分が何者かわからないままでは、相手とどう交わるべきかも見えてこないからです。

自己理解プログラムの設計にも関わった方に聞いたことがあります。多くのビジネスパーソンが「自分は論理的だと思っていたけれど、実は直感を大事にしていた」といった“意外な気づき”に触れています。

そうした気づきは、「相手もまた、自分と同じように複雑な内面を持っている」という理解へとつながり、結果として相手の強みを素直に認めやすくなるのです。


第4章:違いを“力”に変える習慣を持とう

違いを活かすことは、一朝一夕でできるようになるものではありません。
だからこそ、「違いを歓迎する」「相手に尋ねる」「自分の強みと弱みを整理する」といった、小さな習慣を日々の中に取り入れることが大切です。

定期的に実践しているのは、チームメンバーとの1on1で「最近の成功体験と失敗体験を聞く」という習慣。
そこから、その人の価値観や強みが見えてくる。

違いを知り、違いを尊重し、違いを補い合う。
これがシナジーの本質です。


おわりに:違いは、チームの“可能性”

他者との違いを恐れるのではなく、可能性として扱える人は、どの環境でも成果を出せる人です。
衝突を避けるのではなく、違いを生かす対話を重ねることで、チームや組織に本当の力が宿ります。

それは決して“誰とでも仲良くなれ”という話ではありません。
自分の強みを発揮しながら、相手の力も信じられるかどうか。

それが、シナジーを生む人の視点です。