「一生懸命やっているのに、なぜ報われないのだろう」
「頑張っているのに、なぜか空回りしている気がする」
そんな声を、私はこれまで数多く聞いてきました。

実はそこには、ある“思い違い”が潜んでいるのです。
どれだけ努力しても、その「努力の方向」が間違っていれば、間違った場所に向かって全力で進んでしまう
これは決して珍しいことではありません。

今回のテーマは、まさにそのことを象徴する言葉──

「はしごを掛け違えていたら、一段上るごとに間違った場所に早く近づいていくだけである」

この言葉を手がかりに、努力と目標の“ズレ”をどう見直し、どう修正すればいいかを深掘りしていきます。

第1章 「努力すれば報われる」という幻想

私たちは幼いころから、努力の大切さを教わってきました。
もちろん、努力は価値あるものです。しかし――

努力には前提があります。
それは、正しい方向に努力しているかということです。

たとえば、営業職において成果が出ない社員が「とにかく訪問件数を増やす」と決めて努力し続けたとします。
けれど、その商品が顧客のニーズとずれていたり、アプローチが独りよがりであったとしたら、どれだけ数をこなしても成果にはつながらないでしょう。

その結果、「自分は向いていない」と自己否定に陥る。
これはまさに、“はしごの掛け違い”なのです。


第2章 「何に向かって登っているか」を見直す

努力が空回りしていると感じたら、まずは目的地が本当に自分にとって正しい場所かを確認する必要があります。

以下のような問いかけが有効です。

  • この目標は、自分の価値観に合っているか?

  • 誰の期待に応えようとしているのか?

  • このまま進んだ先に、望む人生があるか?

  • なぜ、それを「やらなければならない」と思っているのか?

私は過去、広告代理店でチームリーダーとして働いていたとき、数字を追うことに集中しすぎて部下との信頼関係を後回しにしたことがあります。
表面的な成果は出ましたが、チーム内には不信感が残り、やがて離脱者が続出しました。

そのとき、私は「自分が登っていたのは、評価されたいという欲のはしごだった」と気づいたのです。


第3章 はしごを掛け直す3つのステップ

では、間違った方向に進んでいると気づいたとき、どうすればよいのでしょうか?
私が提案するのは、次の3ステップです。

① 「登る前」に目的地を確認する

まず、自分が達成したいのは何か、その背景にある価値観や欲求を明確にします。
「何を達成するか」だけでなく、「なぜそれを達成したいのか」を掘り下げることが重要です。

② 今のはしごはどこに向かっているかを冷静に観察する

自分が今、日々取り組んでいる行動は、本当にその目的に向かっているか?
行動と目的にズレがないか、検証しましょう。

③ 新しいはしごを見つけ、かけ直す覚悟を持つ

ときには、「今までやってきたことを一度降りる」勇気が必要です。
それは決して敗北ではなく、真に望む方向へ進むための再出発です。


第4章 実践:日々のチェックリスト

以下のような問いを、毎週1回でも確認してみてください。

  • 今やっていることは、目的と一致しているか?

  • 気がつけば「やること」に追われ、「やりたいこと」を忘れていないか?

  • 周囲の声に流され、自分の本心を置き去りにしていないか?

この習慣が、自分の“はしご”を定期的に点検する力になります。


おわりに

努力は素晴らしいものです。
でも、「どこに向かって努力しているか」を見直すことは、それ以上に重要です。

間違った壁にかけられたはしごを、全力で登り続けた先に待っているのは、「こんなはずじゃなかった」という深い後悔かもしれません。

逆に、正しい壁にかけ直せば、その努力は確実に、あなたを望む場所に連れていってくれます。