「一生懸命頑張っているのに、なぜか成果が出ない」
「組織の動きが活発なのに、どこかズレている気がする」

そんな違和感を覚えたことはないでしょうか。
その原因は、しばしばマネジメントとリーダーシップの役割の違いを理解しないまま、日々の業務を進めてしまうことにあります。

二つの違いを理解し、意識的に使い分けることができれば、あなたの努力も組織の力も正しく実を結ぶでしょう。


マネジメントとは「どうやって達成するか」を考えること

マネジメントの視点は、常に「どうやって目標を達成するか」に向いています。
最終的な成果をどう生み出すか、効率的に進めるためにどの手順が最適か。
こうした実行力や改善力は、マネージャーの腕の見せどころです。

例えば、売上目標が掲げられたとき、マネジメントは販売プロセスの見直しや、チームの動き、コスト削減などを緻密に計画し、実行していきます。
言わば、「決められた目標に、最短距離で到達するための道筋を整える」のがマネジメントなのです。


リーダーシップとは「何を達成するべきか」を決めること

一方で、リーダーシップはその前段階にある「そもそも何を達成すべきか」を決める役割です。
目の前の目標が正しいのか。
もっと他に目指すべき方向があるのではないか。
進んでいる道が間違っていないかを見極め、必要ならば方向転換の決断を下す。これがリーダーシップです。

さらにリーダーシップの本質は「何を達成しないか」を選ぶことにもあります。
あれもこれもと手を広げすぎれば、リソースは分散し、結局どれも中途半端になる。
だからこそ、リーダーは「やらないこと」を決め、組織や個人の集中力を導くのです。


「はしごの壁」──努力が報われない理由

この違いを象徴するのが、「はしごの壁」の比喩です。
マネジメントは、いかに効率よく、速くはしごを登るかを考える。
対してリーダーシップは、そもそもそのはしごが「正しい壁」にかかっているかを確認する役割です。

いくら素晴らしい手順で、どんなに努力を重ねて登ったとしても、間違った壁にかかっていれば、たどり着いた先には何もありません。
だからこそ、リーダーシップなくしてマネジメントは機能しないのです。


実績例:方向性を変えたことで蘇った組織

私が以前支援した企業での話です。
その会社は、生産管理のマネジメントが非常に優れており、無駄を省き、コストを抑えることに長けていました。
しかし、製品の売上は伸びず、徐々に市場での存在感が薄れていきました。

原因は、そもそも「今の市場が何を求めているのか」に目を向けていなかったからです。
彼らは「作り方」ばかりに気を取られ、「何を作るべきか」という問いを持っていませんでした。

そこで経営陣が市場のニーズを見直し、目指すべき方向を再設定したことで、マネジメントの力が正しく活き始め、わずか1年で業績は回復したのです。


日々の仕事で意識したいこと

組織においても、個人のキャリアにおいても、リーダーシップとマネジメントの両方が求められます。
ただし、その順番を間違えてはいけません。

まずは「正しい壁」を見極めること。
自分は何を目指すのか、何をしないのかを決める。
その上で、どうすれば最短距離でそこに到達できるのかを考える。
この順序が整えば、あなたの努力は必ず結果に結びつきます。


結論:まずは「何を達成するか」を決める

マネジメントは手段を整える力。
リーダーシップは目的を見極める力。

両方が合わさって初めて、人生もビジネスも望む場所へ進むことができます。
「自分は今、どの壁を登っているのか?」
この問いを、ぜひ日々の仕事や行動の前に思い出してみてください。
その問いが、あなたの未来を変える一歩になります。