「結果を出しているのに、なぜ評価されないのだろう」
「誰よりも働いているのに、報われている気がしない」

そんな声を、私はこれまで多くのビジネスパーソンから聞いてきました。
その多くが、自分だけで成果を出すことに注力し、他者との関係性や周囲の成長を後回しにしていた人たちでした。

逆に、抜きん出たスキルがなくても、組織やチームの中で評価されていく人がいます。
彼らに共通しているのは、「一人で勝とう」としないこと。
つまり、他者と協力しながら、より大きな成果を生み出せる力です。

この違いこそが、「公的成功」と「個人的成功」の分かれ目なのです。


第1章 公的成功は「誰かに勝つこと」ではない

私たちは、無意識のうちに「誰かより優れていること」が成功だと思いがちです。
テストで上位を取る。売上で他を圧倒する。評価で一番を目指す。
学校でも社会でも、そうした“勝ちパターン”を教え込まれてきました。

しかし、本当にそれが「望ましい成功」なのでしょうか?

ある企業のマネージャー研修でこんな話をしました。
「あなたが目標を達成したとして、チームがギスギスし、誰も協力したがらない状態になったら、それは成功ですか?」

参加者の一人がハッとした顔をしてこう言いました。
「確かに、数字はよかったのに、仲間がどんどん辞めていって、むしろ孤立感が強まりました」

他者に勝って得る「一人の成功」は、長くは続きません。
真の公的成功は、関わったすべての人が前に進めるような“豊かな成功”でなければならないのです。


第2章 人は「一人ではできないこと」に挑むとき、本気になる

公的成功とは、効果的な人間関係を築き、協力しながら何かを達成するプロセスから生まれます。

つまりそれは、「あなた一人では到達できない地点に、一緒に手を取り合って向かうこと」。

私が以前支援したNPO団体では、立ち上げ当初は代表がすべてを抱え込んでいました。
自分が頑張らないと回らないという焦りから、他のメンバーに任せる余裕もなく、チームはバラバラになっていきました。

その後、代表が「自分が正しいかどうか」ではなく「全体がうまく機能するにはどうしたらいいか」を軸に行動を変えました。
メンバー一人ひとりの得意や情熱に耳を傾け、共に創る姿勢を持つようになったのです。

その結果、組織は見違えるほど活性化し、代表自身も以前より楽になったと話してくれました。
公的成功とは、まさにこのように「共に創る力」のなかにあります。


第3章 鍵は“豊かさマインド”にある

では、どうすれば「勝ち負け」ではない公的成功の考え方を持てるようになるのでしょうか。

鍵となるのは、“豊かさマインド”です。

これは、他者と成功や評価を「奪い合う」のではなく、「分かち合えるもの」として見る考え方です。

たとえば、会議でのアイデア出しの場面。
誰かの提案に「それ、私も考えてた」と言いたくなる瞬間、ありますよね。
そのとき、「先に言われた!」と感じるか、「その意見を広げよう」と思えるか。
それが「欠乏マインド」と「豊かさマインド」の分かれ道です。

豊かさマインドで関係性を築ける人は、相手の成功を自分の喜びとし、結果として周囲からの信頼を自然と集めていきます。


第4章 “共に創る”ことが、やがて自分を押し上げる

公的成功を目指すことは、単に「みんな仲良く」という話ではありません。
それは、長期的に見て、最も効率がよく、最も深い成果を生む道でもあるのです。

私はあるプロジェクトで、当初「目立たない裏方役」を引き受けたことがあります。
正直、不満もありました。
しかし、誰よりも仲間を支え、全体を俯瞰して助けるポジションに徹しているうちに、プロジェクトの信頼と調整役として不可欠な存在と見なされるようになりました。

最終的に、その実績が評価され、翌年はチームリーダーを任されました。

“誰かに勝とう”とすることでは得られなかった成果でした。


終章 あなたの関係性が、公的成功をつくり出す

公的成功とは、スキルや地位で決まるものではありません。
それは、日々の関係性の中で、どう向き合い、どう協力するかという「生き方」から生まれます。

誰かと何かを成し遂げること。
一人では行けない場所に、誰かと共にたどり着くこと。
そしてその道中で、互いが少しずつ成長していくこと。

それこそが、真の意味での成功ではないでしょうか。


“勝つか負けるか”ではなく、“共に進む”という選択。
そこに、公的成功は自然と訪れるのです。