「人に任せるくらいなら自分でやったほうが早い」
多くの人がそう感じています。
確かに、初めて任せるときは説明に時間がかかり、思った通りに仕上がらないこともあるでしょう。
そのため「かえって手間だ」と思い、全部を自分で抱え込む人が少なくありません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
デリゲーション(委任)は単なる作業の丸投げではなく、自分の能力を何倍にも広げる力を持っているのです。
任せることに消極的であれば、成果の天井は自分一人の限界で止まります。
逆に、人を活かす力を磨いた人は、組織やプロジェクト全体を動かす存在になれるのです。
第1章 なぜデリゲーションを嫌うのか
多くの人がデリゲーションを避けるのは「人に任せるより自分がやったほうが速いし正確だ」という信念からです。
特に責任感の強い人ほど、ミスを恐れて仕事を抱え込み、結果的に自分を追い込んでしまいます。
もう一つの理由は「信頼の不足」です。
相手に任せても期待通りにやってくれるかわからない、という不安が大きいのです。
そのため、安心を優先し自分で処理してしまう。
しかし、それでは長期的にチームの力も個人の成長も頭打ちになります。
実際、私の知人もかつては「全部自分でやる」スタイルでした。
最初は仕事が速いと評価されましたが、次第に業務が増え、残業続きで心身を壊してしまいました。
デリゲーションを避けることは、一見効率的に見えても、持続可能ではないのです。
第2章 効果的なデリゲーションが生む「レバレッジ」
一度きちんと任せられるようになれば、その後は説明の手間が減り、作業の精度も上がります。
まるで最初の投資が利子を生むように、時間とエネルギーが返ってくるのです。
たとえば、私の知人は経理処理を全て自分で抱えていました。
しかし手順をマニュアル化し、後輩に任せたところ、数か月後にはその後輩が自分より速く正確に処理できるようになりました。
結果として本人は新しい事業開発に集中でき、大きな成果を上げられたのです。
つまりデリゲーションは「短期的に損、長期的に得」。
最初の数回は時間がかかっても、その後の累積効果で必ず元が取れます。
しかも任せられた側もスキルアップし、信頼関係も深まる。
これはまさにレバレッジ、テコの原理のように成果を増幅する仕組みなのです。
第3章 デリゲーションを成功させる5つのポイント
1.期待を明確にする
「やっておいて」ではなく、「金曜までにAをBの形式でまとめる」と具体的に伝える。
2.権限と責任をセットで渡す
やり方を細かくコントロールせず、相手の判断を尊重する。
中途半端な任せ方は不信感しか残さない。
3.小さな範囲から任せる
いきなり全部を渡すのではなく、最初は一部を切り出し、徐々に任せる領域を広げる。
4.フィードバックを欠かさない
最初は時間をかけて確認し、できた部分を認めつつ改善点を伝える。
この積み重ねが自律を育てる。
5.「失敗込み」で考える
初回から完璧はあり得ません。
失敗を恐れて任せないのではなく、失敗から学ばせる覚悟を持つ。
これらを繰り返すことで、任せられる範囲が広がり、相手も自律的に成長します。
第4章 自分の時間を「未来」に投資する
デリゲーションは「今の仕事を楽にする方法」ではなく「未来の自分に時間を贈る方法」です。
自分でやれば今日の仕事は片付くかもしれません。
しかし、人に任せられるようになれば、あなたの力は何倍にも広がり、未来の大きな成果へとつながります。
企業経営者や優秀なリーダーが口をそろえて言うのは「任せる力こそが最大の成長戦略」だということです。
短期的な効率ではなく、長期的な成長のために時間を投資する。
これがデリゲーションの本質なのです。
第5章 デリゲーションは人を育てる最良の教育
デリゲーションの効果は自分だけではありません。
相手にとっても「信じて任せてもらえた」という経験は大きな自信となります。
信頼して任せられる環境こそ、人材を成長させる最高の教育の場です。
私の知人がリーダーを務めるプロジェクトでは、若手に責任ある仕事を任せる文化がありました。
最初は戸惑っていたメンバーも、数か月後には驚くほど成長し、チームの成果を大きく押し上げました。
任せることは同時に育てること。
これは教育においても子育てにおいても同じ原理が働きます。
まとめ
「自分でやったほうが早い」と思うのは自然なことです。
しかし、そこを乗り越えて人に任せる仕組みを作れば、あなたの時間は何倍にも有効に使えるようになります。
デリゲーションは他人を利用することではなく、自分の可能性を拡大し、周囲を成長させる投資です。
任せる勇気を持ったとき、あなたは単なる「できる人」から「人を育て、成果を拡大する人」へと進化するのです。
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