手法は状況に応じて使い分けるべきものである。
だが、すべての手法を支えている“土台”となるもの──それが「原則」である。
原則とは、時代や立場、環境に左右されない深い基本の真理であり、個人にも、家庭にも、組織にも、あらゆる集団に普遍的に通用するものだ。
この記事では、「なぜ原則に根ざした生き方・組織づくりが重要なのか」
そして「原則に従って生きることで、どのような変化が起きるのか」について、私自身の体験と企業支援の事例を交えて綴っていきたい。
■ なぜ「原則」が必要なのか?
多くの人は、正しい判断や成果を出すために「手法」や「ツール」に飛びつきたくなる。
たとえば、効率を上げるためのアプリ、部下との対話法、営業のフレーズ集、など。
それらは確かに有効だ。しかし、それは「枝葉」にすぎない。
重要なのは、どんな状況にも通用する“幹”を持っているかどうか。
それが「原則」だ。
誠実さ、責任、尊重、協力、持続性──
こうした価値観に基づく判断や行動は、一時的なテクニックに勝る。
なぜなら、原則は「信頼」をつくり出す力を持っているからである。
■ 原則を持たない組織は、判断がバラバラになる
ある中小企業でのコンサルティングの場。
業績は悪くないが、社員間の信頼関係が希薄で、指示待ちの姿勢が蔓延していた。
社長は嘆いていた。「うちは“やり方”を教えても、なぜか人が育たない」と。
そこで私がまず確認したのは、
「どんな原則で組織運営をしていますか?」という問いだった。
沈黙が流れた。
そこに、“共通の価値基準”がなかったのだ。
だから社員は「どう動いていいか」ではなく、「どう評価されるか」で行動していた。
それは応用力も自律性も生まれない、脆弱なチームだった。
■ 原則を明文化することで、判断力が育つ
私は経営陣とともに、以下の問いをもとに“原則”を整理していった。
-
どんな行動が信頼を育てるのか?
-
判断に迷ったとき、何を基準とするのか?
-
誰かを助けるとき、何を大切にするのか?
その結果、「誠実に対応する」「他者の立場に立つ」「最後までやり抜く」といった原則を定義。
毎週の会議でもそれらを参照するようにし、社内の対話を変えていった。
半年後、リーダー層からこんな声が上がった。
「以前はマニュアルを探していましたが、今は“自分で考える”ようになった」
「原則があるから、判断に自信が持てるようになりました」
これは、原則が“思考の羅針盤”になった証拠である。
■ 原則は家庭にも応用できる
原則は組織だけでなく、家庭でも同じである。
たとえば、子どもに「勉強しなさい」と命令するだけでは、反発が生まれる。
だが、「学び続けることは、自分を自由にする力になる」という“原則”を共に語れば、親子の対話が「支配」から「理解」に変わる。
私の家でも、子どもとぶつかりそうなときには、
「自分がされて嫌なことは、相手にもしない」という原則に立ち戻る。
すると、感情的になっていた自分を冷静に戻すことができる。
原則は、どの場面でも“軸”になる。
それは、迷いを減らし、関係性に信頼を生む。
■ 手法は変わる、原則は残る
ビジネスにおいては、環境も顧客も日々変化する。
当然、手法は時代に応じて柔軟に変えるべきだ。
だが、どんなに外の条件が変わっても、「人として大切にすべきこと」は変わらない。
ある企業では、新規事業に取り組む際、「失敗してもいい、挑戦をたたえよう」という原則を掲げた。
その結果、若手社員が積極的に提案を行い、1年で3つの新しい事業モデルが育った。
手法ではなく、行動を支える“信念”に投資した成果である。
■ 原則に生きるとは、自分を信じる力を育てること
原則を持って生きる人は、他人の顔色に左右されない。
状況の変化にも強く、短期的な損得で行動を選ばない。
そして、自分の判断に責任を持てるようになる。
それは「誰のせいにもせず、自分で考える」力であり、今の時代に最も求められている“成熟”そのものである。
■ おわりに──原則があるから、応用できる
多くの人は、「どうすればいいですか?」と答えを求める。
しかし、その答えは状況によって変わる。
だからこそ、原則という“変わらない軸”を持つことが、あらゆる応用力の前提なのだ。
原則があれば、判断にブレがなくなり、信頼され、自ら考え動けるようになる。
それは、個人の成長にも、組織の進化にも、家庭の安定にも通じる“根っこ”である。
今日、どんな判断の場面にあっても──
まず、自分が大切にしている原則を問い直すこと。
その習慣が、あなたの未来を静かに、しかし確実に支えていく。
この記事へのコメントはありません。